青● 新谷■ 王城◆ 君島★ 時任◇ # ページ *選択肢 #1 ひどく疲れた日だった。 帰路を辿る足がひどく重い。 長年志していたインテリアデザイナーになって早二年。 高校の先輩である野木先輩に声をかけられ、今の会社に入った。 野木先輩はこの世界に興味を持つきっかけをくれた人だ。 先輩の下で必死に仕事を覚え、一人でできる仕事も増え、少しの余裕とやりがいも感じてきた日々。 けれど……。 青● 「今日の先輩、変だったな……」 いつもは真剣な表情で仕事に取り組む野木先輩が、ここ数日どうもおかしい。 何がおかしいとは具体的に言えないけれど、いつもの先輩ではないようだった。 一体どうしてしまったんだろう。 青● 「疲れた……」 よくわからない疲労を感じる。自然とため息が出た。 普段はあまり飲まない酒を飲みたい気分だった。 どこかのバーに入ろうか。 そう思ったところで丁度『BAR』という文字の書いてある小さな看板が目に入る。 青● 「ここでいいか」 俺は地下へ続く細い階段を降りた。 ------------------------------------------------------------------------------- #2 新谷■ 「いらっしゃいませ」 扉についたベルの音とともに迎えてくれたのは、優しそうな笑顔の人だった。 新谷■ 「おや……はじめてのお客様ですね」 青● 「わかるんですか?」 新谷■ 「もちろん。常連さんの多い小さなバーですからね。よくあの小さな看板を見つけられましたね」 青● 「たまたま目に入ったので」 新谷■ 「私はこのバーのマスターをしている新谷と申します。どうぞおかけください」 青● 「ありがとうございます」 言われて、カウンターに腰掛ける。 5席ほどのカウンターには誰も座っていなかった。 青● 「……ここって本当に常連さんばかりなんですね」 新谷■ 「どうしてそう思われるんですか?」 俺の言葉に、新谷さんが不思議そうな顔をする。 俺は正直な感想を言った。 青● 「さっきから背中に感じる視線がちょっと気になるので……」 ------------------------------------------------------------------------------- #3 「ああ、なるほど」 俺の言葉に新谷さんはくすくすと笑う。 「え?」 「いえ。どうぞ気になさらないでください。ご注文は?」 「とりあえずビールをお願いします」 頼んだものが出されたあとも、俺の背中に刺さるいくつかの視線は消えなかった。 俺は気にするのをあきらめて、冷えたグラスに口をつけてビールを飲む。 「あ、このビールすごくおいしいですね」 「ドイツの銘柄です。この辺ではうちでしか出していないんですよ」 「へえ……」 調子にのって一気に飲み干すと、アルコールと一緒にどっと疲れが出てきた。 「はぁ……」 「お疲れですか」 「ちょっと」 苦笑した俺に、新谷さんは優しげな笑みを浮かべる。 ------------------------------------------------------------------------------- #4 「お疲れでしたら、早めに帰られた方がいいかもしれませんね」 その言い方に、俺は引っ掛かりを覚える。 「やっぱり、俺は何か失礼をしたんでしょうか」 「なぜです?」 「特に理由はないんですが……」 歓迎は、されていないような気がする。 未だに様子を観察されているような視線を感じる。 「そんなことはありませんよ。……でも、やはりここは初めての方にはお勧めできないかもしれません」 「どういうことですか?」 「場所柄もありますが、ここにいらっしゃるお客様はあまり柄がよいとは言えないんです。ヤのつく方の事務所もすぐ近くにありますしね」 「ああ、なるほど……」 「私としては沢山のお客様に好んでいただけるようなバーにしたいのですが……」 ガシャン、 新谷さんの言葉を遮るようにガラスの割れる音が響いた。 ------------------------------------------------------------------------------- #5 「オイ、テメェ覚悟はできてんだろーなァ?」 割れたグラスを踏みつけて立ち上がったのは、いかにも柄の悪そうな金髪の男。 「それはこっちのセリフだコラぁ!」 それに相対する男は明らかに逃げ腰だった。 テーブルとテーブルの間で二人の男はどつき合いをはじめる。 周りの客は慣れたようにテーブルごと避難しはじめた。 「……え?」 俺だけがその状況についていけず辺りを見回して右往左往する。 * ケンカを止める(#10) そのまま様子をうかがう(#6) ------------------------------------------------------------------------------- #6 そのまま様子をうかがうことにした。 酔っ払いにはケンカも見世物のようで、周囲は二人のやりとりを面白そうにはやし立てる。 「王城、やっちまえ!」 「賭けにもなんねーな」 「負けた方がここの代金、全部払うってのはどうだ?」 「全員の分だろ!」 外野の声に男はにやりと笑う。 「もちろん」 本格的な殴り合いが始まった。 -------------------------------------------------------------------------------