■シーン1 カッパラダイス ハカマダ 「父上、そろそろヌッポンに行くお金を出してくれてもいいんじゃないですか」 ジュリアス「いかん」 ブルータス「父上。私からもお願いします。王族であるのをいいことに18年もプロニートを貫き通してきたジョゼフが、初めて自分から外に出ると言っているのですから」 ジュリアス「いかん、いかんいかんいかんいかんいかん! 絶対に許さん! 人間界に行くなど! 危険すぎる!」 ハカマダ 「あ〜、だからさっきのは単なる比喩であってコミケはリアルな戦場ではないと小一時間」 ブルータス「大人げないですよ父上。心配なら心配と素直に仰ってはどうです」 ジュリアス「うるさいっ、儂は別に心配なんかしとらんぞっ」 ハカマダ 「なんという嬉しくないツンデレ」 ジュリアス「とにかく、イカンもんはイカン。いつものように部屋で大人しくしていろ」 (ジュリアス立ち去る) ブルータス「父上は相変わらず頭が固くていかんな。我が国の民の多くがジャパニメーションの輸入を切実に望んでいるのは、もはや紛れもない事実だというのに」 ハカマダ 「難しいことはよく分かりません」 ブルータス「(無視)我が弟ジョゼフよ、父上は私がなんとかしよう。お前はこの箱に入ってヌッポンに赴き、かの崇高な文化を我が国に持ち帰るのだ……くれぐれも、組織に先を越されるなよ」 ハカマダ 「組織(笑)」 (ブルータス、段ボールを指差す。ハカマダ溜息をついて) ハカマダ 「狭いところは苦手なんですがね。まあ仕方ない、行ったらアニメ見放題ですしね……はー、どっこいしょ」 (ブルータス、段ボールにふたをする) ブルータス「これでよし……と」 佐河   「ちわー、宅配便でーす。集荷に参りましたー」 ブルータス「すまない。こいつを……頼む。カッパラダイスの命運は運び屋、お前にかかっているぞ(キリッ)」 佐河   「(聞いてない)あざーっす」 (時間経過) ジュリアス「な、なぜだ……部屋にジョゼフがいない……だと……? はっ、ブルータス、きさま謀ったな!?」 ブルータス「だったらどうです父上。あなたの考えは古すぎる」 ジュリアス「なんだと」 ブルータス「本当に頑固な人だ、不本意だが仕方ない――喰らえ! エターナルフォースブリザードぉぉぉッ!」 (相手は死ぬ) ジュリアス「ブルータス、お前もか……? ぐふっ」 (SE:ジュリアス倒れる) ブルータス「ぜーはーぜーはー……ふっ、我が弟よ――あとは頼んだぞ。我が国の誇りにかけて……闇の眷属の魔の手から、至宝と謳われし、かの(薄い)本を護るのだ」 (SE:ブルータス倒れる) ■シーン2 ハカマダ「こうして僕は、母国カッパラダイスを旅立ち……そして気の遠くなるような長い旅路の果てに、このヌッポンに辿りついたのです」 (SE:インターホン) 佐河  「有野さーん、宅配で〜す」 準   「はい」 佐河  「判子おねがいしゃーっす」 準   「はいはいはい……よ、っと」 佐河  「えーと、大丈夫ですか? 重いっすよ」 準   「あ〜〜はい大丈……ってぬおおおおお重ッ!? 冷たッ!」 佐河  「大丈夫すか」 準   「何入ってんすかこれ! もはや小包ってレベルじゃ……ゴホン、小包の域を超えてるっつうの!」 佐河  「は?」 準   「え、あ、あははは……いや〜御苦労さま!!!」 (準、慌ててドアを閉める) 準   「ふっ……危なくスネークに発見されるところだったぜ……じゃなくて、」 さなえ 「準〜? 荷物? なに?」 準   「ああ……なんか超重いんだけど。……ナマモノって書いてある」 さなえ 「母さんの通販じゃないの。こないだまた何か頼んでたし」 準   「ふーん」 (おもむろに段ボール箱が揺れる) 準   「!? さ、さなえ、さなえ!」 さなえ 「何よ、うるさいわね……、って、え?」 (段ボールさらに揺れる) 準   「……あ、開けてみるか?」 さなえ 「じゅ、準あんたやりなさいよ、男でしょ!」 準   「うるせーな、お前の方が戦闘力高いだろさなえ! おまえのアヤシイ雄たけびのせいで俺のスカウターは常に壊れっぱなしだッ」 さなえ 「ちょっと、アヤシイ雄たけびってなによ!?」 準   「夜になると謎の叫び声あげてるだろ! 毎日! 何見てんのか知らねーけど!」 さなえ 「は? 何って……そりゃ『飲み込んで僕のエクs』」 準   「まて皆まで言うな、それよりあの箱には一体何が入ってるっていうんdうわあああああああああああああああああああ」 ハカマダ「謝れ、エクスカリバーに謝れェェェェェェッ!!!」(飛び出す) さなえ 「きゃあああああああ!?」 (バリっと大きな音がして段ボールが中から開く) ハカマダ「はっいけない、つい反応してしまった。かなしいオタクの性とはまさにこのことですね」 準   「な、なんだこの緑色の生き物……? か……か、っぱ……?」 ハカマダ「池のツラと書いてイケメン。しかしてその正体は……カッパラダイス第二王子、ジョゼフ・クリステン・ハカマダ……、しがないオタクです(キリッ)」 準   「喋った! 喋ったぞさなえ!」 さなえ 「喋った! 喋ったよ準!」 ハカマダ「なんだこの珍獣扱い」 準   「それ以外の何だって言うんだ!? 落ちつけ俺……そうだ素数! 素数を数えるんだ、1,2,3,4,5」 ハカマダ「ちょw 素数じゃねーしwww」 さなえ 「えーと。そのカッパラダイス? から、どうしてウチへ?」 ハカマダ「ちょっと兄が中二病こじらせて痛々しいことになってまして……かくかくしかじかな経緯で家出してきました」 準   「なんという」 ハカマダ「そんな訳で、しばらくこちらのお宅に厄介になります」 さなえ 「はぁ!? なんで? なんでよりによってウチ?」 ハカマダ「それは――」 準   「それは!?」 ハカマダ「あなたたちが――救いようのないオタクだからなのですっ」 さなえ 「は?」 ハカマダ「つまりこういうことです、――類は友を呼ぶ……」(無駄にエコー)