『プレゼント』 「だからよ、明日……」 「あ? 俺用事あるっつてんだろ」  さっきからこの押し問答。  横で煙草吹かしてる男は、俺に寄りかかったまま離れようとしない。 「ちっとでいいんだって。 一時間、いや三十分」 「内容によるって言ってんだろ」 「それは言えねぇ」  これもさっきから同じことで、一向に用事の内容を話そうとしない。  正直、ここまで来るとうっとおしい。 「いい加減にしろよ。んで俺が知りえねぇことでお前に付き合わなきゃいけねぇんだ」  そう言って返事を待ったが、 「……」  黙りこんじまった。  いつもならさっきみたいに間をおかずに言い返してくるはず……。 「まぁ、そんなに嫌ならいいけどよ」  嫌とかじゃなく、用事……あぁもう、きつく言い過ぎたか? 「あぁ……、そのまぁ…なんだ、夕方過ぎなら」 「それじゃおっせぇよボケぇ」 「……」  なんか、すっげぇムカつくんですけど。 「だったら他あたれ。俺はもう寝る」  そう言って俺は肘で重たい背中押し上げて立ち上がろうとしたら、 「他じゃ、意味ねぇだろ」 「あ?」 かすれた声に俺は中途半端な膝立ちのまま後ろを振り返る。  そこには背を向け、肩を落として俯いている姿が。 「俺、お宅の好みとか、わかんねぇから」  好み?一体何の話なんだ。 「色々考えたけどよ、あんま思い浮かばなくて」  何の話かわからず、ちんたらブツブツ言ってる様に業を煮やして、 「さっきから何なんだマジで。はっ倒すぞ」 「だから、ぷ……」 「ぷ?」 「ぷれ、ぜんと……」 「は?」 「好み、わかんねぇから、本人が選んだほうがって」  何言い出すかと思えば、耳まで真っ赤にして、 「んで、何でプレゼントなんて……」 「はぁ!?」 「うぉっ!?」  いきなり振り返られるもんだからびくついて気持ち退いたら、 「明日てめぇの誕生日だろ!!」 「へ?」  俺の誕生日は……、 「それは、来月だ」 「え、」  きょとんとする表情に、俺は思わず笑いがこみ上げて、 「可愛いな、お前」 「ば、馬鹿にすっ!?」  手首掴んでそのまま引き寄せた。 「ちょっ、煙草!火!!」 「るっせぇちったぁ黙れ」  喚く口を口で塞いで、抱き寄せる腕に答えるように首に回される腕。  ホント、素直じゃねぇ。 「だったら来月、その日空けてろ」 「へ?」  余韻を残した潤んだ瞳を見つめながら、朱色に高揚した頬を撫でる。 「俺のために飯用意して、デザートお前な」 「相変わらずオッサンだなマジ」 「……」  やっぱ、可愛くねぇ。 END