『休日の昼下がり』  ぼんやりと、外眺めてる。  煙草に火を付けるのも忘れるぐれぇ、外に何か見入るもんでもあんのかと首を傾げる俺は、冷蔵庫に近づいてドアを開いた。  さっき洗ったばかりの髪タオルでガシガシ拭きながらお茶の入った大きいペットボトル掴みだしてシンクに置く。  そんで食器かごに入ってたマグカップの柄を持ってそのペットボトルの横に並べた。タオル首に掛け直して、ペットボトルを持ち上げキャップを回して外す。  開いた口を傾けて中のお茶をマグカップの中へと静かに注いだ。そん時、 「へぶしっ!?」  鼻のむず痒さすら感じないままにクシャミ一発。  俺は思わず手元力抜けてペットボトルをシンクの中に落としてしまった。  慌ててそれを掴み上げると、中がもう少なくなってたおかげで中身が零れることは無かった。  俺はほっと胸を撫で下ろすと、軽く台ふきんでペットボトルの周りを拭いて、蓋閉めるとさっさと冷蔵庫ドア裏のポケットにすぐ戻した。  軽く濡れた掌と鼻の下、肩に掛けてたタオルで簡単に拭いて、俺はマグカップ片手にリビングに向かう。  そして俺の視界に再び入ったアイツは、飽きもしねぇのかまだ窓の外を見つめてた。 「なぁ、なんかあんの?」  俺が声かけるまで気づかなかったようで、視線をこっちに向けたその表情はかなり驚きの色を見せている。 「え、あ……」 「風呂、入っちゃえば?」 「あ、あぁ……」  そう呟いて、火すら付いてなかった煙草をデスクに置いてある灰皿に押し付けて中に入れると、奴はそそくさとバスルームへ向かった。  俺はその背中が消えるまで見つめ、軽く顎を掻いた。  奴が立っていた場所に、同じ向きで、同じ様に外に目を向けた。その視線の先のを見つめ、 「あぁ……」  俺は思わず目を細めた。  俺の目に映るのは、公園の敷地内。  そこには両親の見守る中、大型犬とじゃれ合う子供が二人居た。  今日は時期的には外が少し暖かめだからかなぁ。と、一人ぼんやり考えながら、その仲睦まじい風景を見つめ、手にしていたマグカップの縁を口元に宛がった。すると、 「なぁ、」 「ぶへっ!?」  既に風呂に入ったものだと思っていた奴が、何故か俺の隣に。  口に含んだお茶噴出しそうなの堪えてゴクリと飲み込むと、首から垂れ下がってるタオルで口周りを拭いた。  声かけてきて、その続きが無い沈黙に、俺は中身無くなりかけてたシャンプー容器にお湯直に入れたのがバレたかと思って内心ドキリとしたけど、 「外、出かけねぇか」 「は?」  少し俯き加減に、どこか照れてるような感じに見えるその姿に俺は、こみ上げてくる笑いを堪えて、 「じゃぁ着替えてくるわ」 「お、おぁっ!?」 「その間に風呂入れよ」  奴の耳に口付けてそう囁いた。  立ち去る後ろから何やら喚く声が聞こえてきたが、俺は緩みっぱなしの顔で鼻歌歌った。 「相変わらずオンチなんだよ」って最後の言葉は聞かなかったことにして。 END