【バーチャルメビウス】    わたしは幸せなハズだ。  毎日学校へ行って、個性豊かな友人達と楽しく過ごす。  勉強だって運動だって、努力すれば良くなるものだ。  部活だって、役委員会だって、皆一生懸命に頑張っている。  学校が終われば女友達と一緒に帰ったり、遊んだりする。  話題は恋愛が多いかな?  出掛けるのは、カラオケやショッピングに良く行く。  バイトだって楽しい。  いろいろ辛いこともあるけれど、それでも頑張れば店長が褒めてくれることだってある。  そして、彼氏。  高校入学してから、ずっと気になっていた彼。  でも学校で1番人気で、手が届かなかった。  彼につり合うように、いろいろなことを頑張ってきた。  アプローチも積極的にして、彼の方から好きだと告白してくれた時は嬉しかった。  幸せな日々。  満ち足りた毎日を送っているハズなのに…ふと、考える時がある。  どこか虚しさを感じるのは、何故?  自分で選んで、頑張って努力したからこそ、今の日々があるのに…。  目の前で彼が微笑んでいても、どこか…遠い。  何…で?  …あぁ、また意識が遠くなる。  時々起きるコレは…。 「あ〜、何かもう、飽きちゃったなぁ」  アタシはテレビ画面を見て、ため息をついた。  大人気恋愛シュミレーションゲームをやり始めて、結構経つ。  大体のキャラクターも攻略できて、後は1番人気で難しいキャラを攻略すれば、このゲームは終わりだ。  でも何度もプレイしたせいか、少々飽き気味になってしまった。  アタシはゲーム機の電源を落とした。 「…何かしばらくやらなくてもいいや」  ソフトをケースに入れると、アタシはベッドに横になった。  アタシには他にもやることがたくさんある。  その為にも、疲れを癒やす為に、眠るのだ…。 「ふぅ。やっと休憩ね」  あたしはパソコンの画面を見て、ため息を吐いた。  育成ゲームソフトって、結構疲れるのよねぇ。  いろいろなことをやらせなきゃだし、眠らせないと体力ゲージが下がりっぱなしになってしまう。  今は恋愛シュミレーションゲームをやらせて、パラメーターを上げている最中だった。  あとちょっとで全部クリアできる。  休ませて体力が回復させたら、またプレイさせよう。  でももうこのパラメーターは十分な気がする。  違うことをやらせて、他のを成長させた方が良いのかもしれない。 「まっ、それは明日で良いか」  あたしはあくびをして、ベッドで眠った。  あたしも休まなきゃ、やることがあるのだから…。 ―そして、電源は切られた。 【完】