/0  アルバート・メイソンがその光景を目の当たりにしたのは、午後1時を過ぎた瞬間だった。騒がしいながらも静かに経営されていたN州の大規模銀行店の中は文字通り大パニックになった。  怒号に悲鳴。周章狼狽(しゅうしょうろうばい)する者、転びそうになりながらも銀行出入り口で寿司詰め覚悟で向かう者。  別段、メイソンは銀行に用があるわけではない。彼は今日行われるテレビの生放送に出演する機会があり、そのスタジオを訪れる前の散歩に過ぎなかった。 それが何故、銀行強盗などに遭遇する羽目になるのか。メイソンは己の不幸を呪うしかない。  年々に続く紙幣のデータ化に伴い、銀行そのものの利用価値は過去200年前に比べれば圧倒的に落ちている。 ナノマシン生体認証による残高確認・支払い・入金・振込など。紙幣はデジタルの数字に変化し、お金を入れる財布は人間そのものに取って代わった。 認証が成立すれば文字通り裸で買い物という取引すら可能なこの時代は、為替でのお金の移動が殆どである。 しかし、だからと言って全く無い訳にもいかないのが現状だ。相変わらず現金主義という変わり者はいるし、ナノマシン不適合者(ナチュラル)もいる。いずれ貨幣のデータ化が完全終了するだろうが、それでも金融機関が庶民の中から消えることは無いだろう。 「五月蝿い、黙れ! 死にたくなければ両膝を付いて手を上げろ!」  そんな建物の中での陳腐な台詞に威嚇の銃撃音。人工大理石の天井を撃ち抜き粉々に砕き割った音に重なる悲鳴。メイソンはそんな中、一人逃げること無くソファに座ったまま、その光景を眺めていた。 《アルバート、何を呆けているのですか。過去の感傷に浸るのは構いませんが、今は貴方自身の危機ですよ》  メイソンの耳からではなく、頭から響き渡るような感覚。頭の鈍痛にも似たそれは、彼のナノマシンナビゲーター(N=NAVI)、略してN-NAVI(ナノ−ナビ)が信号伝達を行なっている証拠でもある。  本来、N-NAVI(ナノ−ナビ)は現在の状況をリアルタイムに把握しナノマシン利用の提案をする生活補助機能(ヘルプアプリケーション)に過ぎなかったが、友人から与えられた試作の最新更新版(バージョンアップ)は、妙に人間ったらしい思考を持つ女性型N-NAVI(ナノ−ナビ)に変わってしまった。これが良いのか悪いのか、彼自身良く分かっていない。 「……ああ、分かっている。分かっているよ。どうしても昔を思い出してしまうからね」 「そこのキミ。何を喋っている? 早く膝をついて両手を上げろ」  先程銃を乱射し威嚇していた犯人がメイソンに銃口を向ける。しかし、最初に聞いた口調と今の口調はまるで違って聞こえた。神経伝達物質の操作(ドーピング)を行なっていたのだろう、本来は今のように少し落ち着いた感じの人物なのかもしれない。  メイソンは犯人の言うことに従った。これは、銀行内での立て篭もり事件に発展するだろう。彼は口を開かず、あくまで頭のなかで反芻するようにN-NAVI(ナノ−ナビ)に語り掛ける。 『オルガン展開。警察権限(ポリスアプリケーション)申請開始』 《了解です、アルバート。それと、先程より興奮が大きいようですね。安定神経物質(セロトニン)の分泌を多めにすることをお勧めします》  余計なお世話だ、と彼は心の中で呟くと、視界が半透明のブルースクリーンで染め上げられる。左上には警察権限(ポリスアプリケーション)申請中という小さなウインドウが明滅していた。  ブルースクリーンは通称、有機生体画面(organic-display)。略してオルガン(organ)という。視界から表示可能なインターフェイス画面である。 正確に言うなら体内に循環しているナノマシンが脳神経を刺激し、視界というよりも脳内にオルガンを表示させている。 ただそれは視野上に表示されるので、オルガンは視野認識と誤認している者が殆どだ。そして、それでも問題はない。利用者が構造に理解がなくても使いこなせている事実があるからだ。  このオルガンから出来ないことは殆ど無い。役所や政府からの制限(リミッター)が付いている場合も多いが、決算・検索・調査・体内の自己検診などをナノマシン経由で全て行える。 勉強機能(スタディアプリケーション)を取り込めば(インストール)すれば、僅か10代にも満たない少年少女が多種多様の知識を容易に得ることだって出来る。このアメリカでも学校は最早数える程しか無い。 《警察権限(ポリスアプリケーション)が承認されました。アルバート、貴方は警官としての行動を起こすことが認められました。尚、アルバートの視界はリアルタイムで本部へ送信されています。ご了承ください》 『よし、まずはこの犯人が複数犯なのかを確認したい。この銀行の防犯カメラの映像はオルガンに表示可能か?』 《警察権限(ポリスアプリケーション)があればアクセス可能です》 『なら表示してくれ。生体認証と生体反応がある映像、取り敢えず室内のみだ』 《了解。表示させます》  瞬間、メイソンのオルガン上にズラリと人が写っている映像が映し出された。  ここから目の前にいる犯人の協力者がいるかどうかは判断が付きにくい。一階……つまりは今、強盗犯が占拠している場所は彼以外堂々と歩き回っている者はいない。逃げきれなかった者は皆、怯えて竦み上がっていた。一般人に供給されるナノマシンは特殊職業の人間より制限が大きい。その恐怖に打ち勝つ神経伝達物質の操作(ドーピング)などは行えないだろう。  二階、三階、四階……とカメラ映像を確認していく。金庫周辺の映像も確認してみるが、それらしい人影は見られなかった。この犯人は単独犯なのか? メイソンは訝しむ。  ここに来て、ようやく彼は強盗犯の姿をきちんと確認する。銀行強盗を行うような服装ではない。季節が夏に向かいつつある中、未だ長袖ではあるが随分とラフな格好である。 また、顔を隠していない。無精髭を伸ばし、眉も整えていない厳つい40年代の人間。その様を改めて確認しまるで熊のようだ、と彼は思った。 《外見年齢30〜40程。短めの黒髪で体格は比較的ガッシリしているようです。しかし、無精髭が頂けませんね。これでは女性にモテることはないでしょう――念の為、検索に掛けますか?》  本当、このN-NAVI(ナノ−ナビ)は一言多い。メイソンは勝手にしてくれと心の中でため息をつく。 「よし、皆座っているな、よし……。警察はまだか、まだなのか……」  犯人は全員が抵抗の兆しを見せないことを確認し、ブツブツとそんなことを呟きながらグルグルとあたりを周り歩く。警察を待っているようにも聞こえたが、メイソンにはその意図が見えない。一度、ここまでの記憶を再度再生(リピート)すべきか迷ったが、その前にN-NAVI(ナノ−ナビ)の呼出(コール)が早かった。 《アルバート、検索結果が出ました》  オルガン上にも表示されるが、その前にメイソンの認識の方が早かった。 『ミラー・ローガン。ナノマシン脳科学研の教授? 何故そのような人がこんなことを?』  いや、これは本当に銀行強盗なのか。メイソンは疑問を持つ。ローガンは未だ何かを待っているような素振りを見せている――言葉通り警察を、だろう。  事実、彼は未だに金銭の要求を行なっていない。初めは銀行内で強盗が発生したと思っていたが、ローガンの目的は別のところにあるのかもしれない。  確かに、ナノマシン不適合者(ナチュラル)でも無い限りこの犯行の先は見えている。常にナノマシンによる生体認証が行われている中、彼のオルガンが自身の犯罪行為について警告と通報を行なっているだろう。ナノマシン研究を行なっている人間がナノマシン不適合者(ナチュラル)とも考えにくい。犯罪行為をしたら最後、捕まるのは必定である。 そもそも小説や映画、ドラマでも近年見なくなった銀行強盗でも、もう少しスマートに事を済ます筈だ。何も真っ昼間に銃を片手に頓痴気騒ぎを起こす必要など無い。 ローガンは、捕まる覚悟で何かを実行しようとしている。テロの可能性も考えたが、如何せん情報が少なすぎてアルバートには判断がつかない。 《アルバート。ローガン氏に電子メールを送りますか?》 『確かに、直接会話するよりは柔らかい対応かもしれないな。念の為確認するが、それら(オルガン)が本部に送られていることはないな?』 《ご安心下さい。本部に送信されているのは裸眼時の映像のみです。オルガンやその他画面は削除(カット)されます》 『分かった、頼む。相手を刺激しないような文面で頼む』 《了解です、アルバート》  犯人(ローガン)と会話をしているなんて事がバレたら面倒だからな、と彼は胸の内で嘆息を付く。  実際、警察権限(ポリスアプリケーション)の許可が下りたがこの状況でどうして良いのか分からない現状が彼にはあった。  捕らえていいのか。それとも、外から来るであろう警察を待てばいいのか。警察権限(ポリスアプリケーション)といえど、銀行強盗に対する犯罪対策(マニュアル)はないようだった。 200年前のアメリカは、決して少なくない数の銀行強盗が発生していた筈。しかし、ナノマシンの進歩と犯罪史が変容していく中、銀行強盗の発生率がほぼ0%になり、犯罪対策(マニュアル)から削除(カット)されたのだ。故に、今回のローガンによる犯行は警察権限(ポリスアプリケーション)の最新更新版(バージョンアップ)を強要することだろう。  そして、ローガンはぐるり、と首を回してメイソンを見た。N-NAVI(ナノ−ナビ)の作ったメールを受信し読んだのだろう。しかし、ローガンのその唐突な行動に彼は気色ばんでしまった。 彼はメイソンの目の前に銃を突き付けながら、ゆっくり近づく。AK系突撃銃(アサルトライフル)。脳科学研の教授とは無縁そうな武器だった。 「今のメールは、キミかい? しかもなるほど、警察なのか」 「……ええ。まぁそんなところです。教授とあろうものが、何故このようなことを?」 「凄いなキミは。この状況下でオルガンを使って私の事を検索する余裕があるのか」 「そりゃあ、職業柄」  メイソンは歳相応らしく、下手に出る。抵抗する意思はないと証明する為に、言われた通りの格好は崩さなかった。 「はっはっは、キミみたいな若い子がいてくれたらアメリカは安泰かもしれないな」  ローガンは言った。 「しかし、キミもこの国の現状を知っているだろう。90%に近い人間が生まれた瞬間にナノマシンを投与され、ナノマシンによって成長して生きていくこの世界を」 「ええ、嫌というほど」メイソンは答える。「何時ぞや夢見たSFの世界(ファンタジー)だ」 「そう、SFの世界(ファンタジー)だ。これからもっと奇想天外(ファンタスティック)な未来が待っていることだろう。その未来に対し、私は自分自身の命と引き換えに警鐘を鳴らすのだよ」 「……話がよく分かりません。何の話ですか?」 「済まないな。これ以上は言えない。言わないのではなく、言えない。禁句用語(ブロックワード)に触れるようだ」  禁句用語(ブロックワード)というのは言葉通り言ってはいけない単語や文面の事で、主に秘密保持に使用されるナノマシン機能(アプリケーション)である。言論の自由を奪うとされつつも、企業などの取引などで利用されている。  何せ、殆どの人間が見ている光景や聞こえている内容をリアルタイムに記憶、再生、添付送信などが行えるナノマシンを標準搭載しているのだ。半ば私事権(プライバシー)を守る為、取って付けられたような経緯がある。 「しかし、ローガン教授。禁句用語(ブロックワード)は極一部にしか適応されていないと聞きます。人々は愚かではなかった。ナノマシンを使って他人の私事権(プライバシー)を破る人間は殆ど居ないとも。脳科学研なら尚の事、むしろ情報開示(アップデート)に禁句用語(ブロックワード)など設定したら……」 「そういう事じゃない。そういう次元でもないのだよ。もっと根本的な部分。そう、そこが全世界の人類(ナノマシン保持者)が知らなくてはいけない事実があるのだ」  ローガンはそう言うが、メイソンは彼の言動に理解が及ばなかった。思わせぶりを通り越して、狂人(ジャンキー)の類である。彼は続けた。 「私達は、余りにも真実を知らない。知らぬ存ぜぬは通用しなくなって来た。今こそ審判の時なのだよ。なんなら、キミも証人の一人になるかね、アルバート・メイソン君?」 《アルバート、ローガン氏は貴方を検索に掛けています!》  N-NAVI(ナノ−ナビ)の通達と同時に、メイソンは動き出していた。彼は突き付けられていた銃口を思い切り両手で掴み上げ、そのまま自身の内側に捻り込む。海兵素手戦闘(MCMAP)と呼ばれるそれはローガンの動きを封じずとも、銃そのものを彼の手からもぎ取った。  しかしその瞬間、周囲から悲鳴が上がると共に、メイソンの背中から激痛が突き抜ける。何事か、と思った瞬間に彼は大理石に体を叩きつけられていた。 「驚いたよ、メイソン君。キミのナノマシンはそのような機能(アプリケーション)も搭載しているのか! それは明らかに一般人が持つナノマシン機能(アプリケーション)ではないね? 私も武術機能(マーシャルアーツ)は入れているものの、軍隊格闘の類は何一つ取り込んでいない(インストールしていない)よ?」  トントン、とメイソンを蹴り抜いた右足の調子を確認しながら、彼は言う。 《右広背筋下部に打撲。内出血が発生しました。ナノマシン治療を開始します》 「くそ、銃を奪われたと思ったら躊躇なく手放す度量は驚嘆に値するよ。しかも蹴りまでお見舞いしてくれるとはね」  元々、彼の銃の取り押さえ方は対拳銃であり、突撃銃(アサルトライフル)は適応外である。結果、銃しか押さえられず挙げ句の果てにはローガンに背中を向ける羽目になった。その隙を見逃すことは、子どもでもしないだろう。 「やはり、ナノマシン機能(アプリケーション)は完全とは言えんな。決まった形でしか行動出来ない。臨機応変な行動を起こせない。人間、実体験に勝るものはないな」 「そうかい。残念だがさっきのもこれも、全部自前だよ!」  メイソンは起き上がりながらも奪い取った突撃銃(アサルトライフル)を構え、ローガンに向ける。特にAK系は扱いが容易だ。今更ナノマシン機能(アプリケーション)を使う必要性もない。 しかし、アルバートが次に見たのはローガンの降参する姿ではなく、彼がまさしく右足を振り抜いた光景だった。 《オルガン認識。左手甲に直撃(ヒット)し中指PIP関節から中手骨に掛けての骨折被害の発生予測。アルバート、銃を手放しなさい!》 N-NAVI(ナノ−ナビ)の今回の通達は言葉ではなく、メイソンの脳に直接叩きこむ命令であった。彼が反射的に突撃銃(アサルトライフル)から手を離した瞬間、それが小気味良い音を響かせながらあらぬ方向へ吹っ飛ぶ。 その後に起きたことは、一時は収まったかと思った混乱の嵐だった。銃殺という抑止力を失ったローガンから一目散に逃げようと、彼が脅し黙らせていた従業員や一般客が改めて出口を求めて逃げ出したのだ。 ローガンは一瞬どうしたらいいのか迷ったが脅すべき凶器を失い、やれやれと言った体で首を竦めるのだった。 「やれやれ。参った。蹴ったのは失敗だったね。僕はさっき、撃たれるのを覚悟で銃を奪い返さないといけなかったようだ」 「にしては、躊躇なしに蹴りを入れて来ましたね」 「蹴り落とした方がキミの動きも止められて、一石二鳥と思ったのさ。挙句、失敗したがね」 ローガンは逃げ惑う人々を眺めながら言う。その姿は、何かを達観しているようにも見える。 「あの、ローガン教授。先程言っていた警鐘を鳴らすというのは、どういうことなのですか?」  メイソンは警察権限(ポリスアプリケーション)を起動させているにも関わらず、彼の拘束を行わなかった。行う気にはなれなかった。勿論、拘束道具を持っていないのもある。しかしそれ以上に彼の自由を奪う事に何故か気が引けてしまった。 それはどうしてか――考えた末、判明した。ここには緊迫感というのが皆無だったのだ。  銀行強盗というものを今の今までに体感したことがないメイソンであるが、それはもっと生死の瀬戸際に立たされる事件の筈だ。しかし、ローガンの本来の気質を会話の中で感じ取った。彼は、銀行強盗をするような人間ではない。精々、神経伝達物質の操作(ドーピング)で強がるのが関の山な大人しい人物なのだと。 「言ったはずだよ。これ以上は言えないと。本当はナノマシン不適合者(ナチュラル)に見て貰いたかった真実だが、キミも或いは辿り着けるかもしれない」 「話が見えません! ローガン教授、貴方は……!」 「メイソン君……と言うのも変かな、キミの方が圧倒的に歳上なのだから。まぁいい。キミが万能技術者(マルチクリエイター)なのは、今知った。まさか警察権限(ポリスアプリケーション)まで持っていたのは予想外だったが……それも不幸中の幸いだろう。今キミの視界映像は警察本部に送信されているね?」  メイソンがそれに頷くと、ローガンはこめかみを抑えながら分かったと手を振り答える。 「そうか……ならいい。それに、時間が来たようだ……」  ローガンはそう言うと、いきなり呻きだして膝を折った。その声は苦悶に満ちており、何かが起きたことはメイソンにも察しがついた。しかし、その何かが分からない。彼は慌てて倒れた教授の体を支える。オルガンで警察の到着を確認するが、あと1~2分は掛かるようだった。 「教授!? どうしたのですか!?」 「限界、だよ……。人間の限界が、訪れた、のだ……。アレは、」  ローガンの言葉はそこで途切れた。代わりに聞こえたのは、パァンと風船が割れるのに近い音だ。それが、このホールに鳴り響いた。  同時にメイソンの視界が一瞬で赤と別の許容し難いナニカに染まる。同時に鼻孔は鮮血の香りを嗅ぎとった。いや、味もした。それが霧散し霧状と化して肺を侵し彼は反射的に咳き込む。 《アルバート、今現在の光景は倫理(モラル)に反します。この記憶は後ほど削除(デリート)する事をお勧めします》  日頃から鬱陶しいN-NAVI(ナノ−ナビ)と思っていたが、今回に限って全面的に彼はその意見に同意した。まるで花火のように頭から――厳密には顎から上をふっ飛ばし、鮮血を迸らせるローガンは赤い噴水器に成り果てていた。  メイソンは顔を失った彼をどうして良いのか分からず、取り敢えずそのまま血の池に体を沈めさせた。 「どういうことなんだ、これは……」 《オルガン認識。……ローガン氏の頭部が破裂した模様です。原因は不明。アルバート、精神状況が徐々に不安定になってきていますね?》 「そんなことより、いや、なんなんだよ、ああ、くそ……!」  顔が血塗れになり、袖で拭おうとしてもその袖すらローガンの血でぐっしょりと濡れており、より顔が血に染まる。 近くで、サイレンの音がした。