◆「教師だって恋をする!」(オリジナルシナリオ) --------------------------------------------------------------------- <ストーリー> 東京の教育学部を卒業した国松綾乃。憧れていた田舎で教鞭を執る夢が叶い、田舎へと引っ越してきた。就職した高校での恋愛ストーリー。 ---------------------------------------------------------------------- <キャラ> ◆ヒロイン:国松綾乃(クニマツ アヤノ)(22歳)東京育ち。のんびりした田舎暮らしに憧れる。 ◆永田一巳(ナガタ カズミ):新任教師。体育担当。見た目はホストっぽい。一人称は僕。 ◆有栖川智也(アリスガワ トモヤ):綾乃の教育係。眼鏡を掛けた真面目な男性。苗字が女性っぽい為、あまり呼ばれたくない。一人称は私。 ◆水沢透(ミズサワ トオル):体育教師。永田の教育係。剣道部顧問。綾乃の大学時代代の先輩。一人称は俺。 --------------------------------------------------------------------- <高校・ホール> 【綾乃】 「ああ、緊張する……」 今日は高校の入学式。そして、初めて生徒達の前で自己紹介をする日。 今年、東京の大学、教育学部を卒業した私は、田舎で教鞭を執るという夢を叶えて、この各務原高等学校に就任した。 【校長】 「え〜、新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。我が各務原高等学校も、創立30周年を迎えました。今年も『誠実・努力・絆』の校訓を大切にし、頑張って下さい。え〜、では四月からの新任の先生を紹介しましょう」 【綾乃】 (きたーーー!) ドクンと心臓が大きく跳ねる。 【校長】 「え〜、では、体育担当の永田一巳先生です」 校長先生がそう言うと、黒いスーツに、カラフルなネクタイをした男性が檀上に上がった。 【綾乃】 (体育? …何かイメージが違う…) 私がそう思うほど、永田先生は線が細くて髪の毛もフワッとカールしている。そして、派手なネクタイ。どう見てもホスト。それが私の第一印象だ。 【永田】 「どうも初めまして。手取り足取り、みっちり体育を教えますので、宜しくお願いします」 言葉の最後にウインクまでしてみせる。すると、ホールの女生徒がきゃーっと声を上げた。 【綾乃】 (うわ、凄い反応! 確かにカッコイイけど、何か軽そう…) 【校長】 「え〜、では次に、音楽担当の国松綾乃先生です」 【綾乃】 (あ、私だ!) 慌てて壇上への階段を上ったのがマズかった。 【綾乃】 「きゃっ!?」 私はものの見事に階段を踏み外して転んでしまった。 ホール内の生徒から、笑いが飛び交う。 (うう…、超恥ずかしい…!) 【永田】 「大丈夫?」 【綾乃】 「あ、はい」 柔らかい微笑みを浮かべた永田先生が、私に手を差し伸べてくれた。 【綾乃】 (優しい…) 【永田】 「良いね、白い下着は」 【綾乃】 「は!?」 (ちょっと、今のはどういう…?) 【永田】 「国松先生、生徒が待ってますよ?」 【綾乃】 (さっきのは聞き間違い…!?) 色々思うところはあったが、今は自己紹介の時間。私は永田先生の手を借りて立ち上がった。 【綾乃】 「えっと、国松綾乃と言います。担当は音楽です。楽器を弾くのも好きですが、何より歌うのが好きです。宜しくお願いします」 (ちゃんと言えた!) たったそれだけだったけれど、教師としてのスタートを感じ取った。 【校長】 「え〜、永田先生は1年1組、国松先生は3組が担当となります」 <職員室> 【校長】 「え〜、自己紹介をお疲れ様でした。え〜、当学校では、教師同士は名前で呼び合っています。まぁ、これは田舎の小さな高校なので、『絆』を強くさせるのが目的です。なので、そのようにして下さい」 【綾乃】 (そうなんだ。フレンドリーだから、早く馴染めるかも) 職員集団に入れたみたいで嬉しい気持ちが高まる。 【校長】 「では、綾乃先生の指導係をば……。有栖川智也先生です」 ギシッという椅子がきしむ音がすると同時に、スッと長身の男性が立ち上がった。 【有栖川】 「有栖川智也だ。私は厳しいから覚悟しおくように」 眼鏡をクイッと上げて不敵な笑みを浮かべている。 【綾乃】 「あの、宜しくお願いします。有栖川先生」 丁寧にお辞儀をした。 【有栖川】 「違う! 先ほど校長が仰られていただろう? 私の事は智也先生と呼ぶように」 何故かムキになって言う有栖川せ…もとい智也先生。 【綾乃】 (苗字…可愛いのに、性格は反対なのかな?) 【校長】 「え〜、一巳先生は、同じく体育教師の水沢透先生です」 【綾乃】 「え!? 水沢先輩ですか!?」 驚いた。水沢先輩といえば、大学で同じサークルの先輩だったからだ。卒業して地元で教師になったという噂は聞いていた。 【水沢】 「綾乃、久しぶりだな。名前を聞いた時、まさかって焦ったぜ」 そう言うや、水沢先輩は大きな声を上げて笑った。 【綾乃】 「ふふ、こえからは透先生って呼びます」 【水沢】 「ははは、新鮮だな」 そう言って、私の頭を撫で回す。あの頃と変何も変わっていない。 【綾乃】 (大学時代、好きだった…んだよね) 【永田】 「感動の再会をしている時に悪いんだけど、僕も挨拶をして良いかな?」 【水沢】 「ああ、悪い。一巳先生だったね、宜しく」 透先生が一巳先生の手を取り、強引に握手をする。 【永田】 「うーん、手を握られるなら、女性の方が良いね」 ぼそりと呟く声を、私は聞いてしまった。でも何だか突っ込まない方が良いように思って、さらりとその場を流した。 <教室> 【綾乃】 「国松綾乃と言います。趣味はお菓子作りと音楽鑑賞です」 (こんな感じかな?) チラリと智也先生に視線を移す。 【有栖川】 「では、教育方針について話をしてもらおう」 【綾乃】 「え?」 (教育方針!? どうしよう!? 深く考えて来てなかった……!) 【有栖川】 「早くしたまえ」 【綾乃】 「あ、はい…。えっと、あの、誰もが楽しめる授業をしたいと思います」 私は思っていた事を笑顔で言った。 【有栖川】 「ほう…。高校生に向けてその言葉か」 教室内にはピリピリとした空気が流れている。恐らく智也先生の威圧するような存在のせいなのだろう。 【綾乃】 「やはり、それがあってこそ上達出来ると思うんです」 【有栖川】 「ふっ、出来るものならしてもらいたいな」 智也先生は、眼鏡をクイッと上げる仕草をしてニヤリと笑う。 【綾乃】 (何ですかー!? その意味あり気な言い方はー!?) <職員室> 【綾乃】 「はぁ、何とか一日が終わった〜…」 私は机にペタンとうなだれる。 【永田】 「綾乃先生、どうだった?」 大らかな笑顔で一巳先生が私に聞いてきた。その様子からは、良い感じに一日が終わった事が想像出来る。 【綾乃】 「あはは、やっと一日って感じです」 引きつる笑いを向ける。今日はずっと智也先生の視線を感じて過ごしたので疲れていた。 【永田】 「じゃあ、帰りにバーへ飲みに行かない?」 心配そうに言うのではなく、まるでナンパでもするような軽い感じの誘い方だった。 【水沢】 「飲みに行く話か?」 ひょいと透先生が話に入って来た。 【永田】 「申し訳ありません。今夜は新人同士でって事で」 悪びれる事もなく、さらりと一巳先生が言う。 【水原】 「そう言うなって! 今夜は歓迎会をやろうって、居酒屋を予約してあるから!」 満面の笑顔で透先生が畳み掛けるように言い、いつしか職員室内は歓迎会に向けて盛り上がっていった。 【綾乃】 「私は参加するの楽しみです」 【永田】 「綾乃先生がそう言うなら、僕も行こうかな」 一巳先生は、ヤレヤレといったジェスチャーをする。 【有栖川】 「新人二人、羽目は外し過ぎないように」 最後を締めたのは、智也先生。 【綾乃】 (何だか色んなタイプの人が居て、私の生活も楽しくなりそう) ドキドキワクワクする気持ちが広がっていくーーー